Mary Had a Little Lamb

Mary Had a Little Lamb

長沢慎一郎

出版社:赤々舎

小笠原の壕、その空洞に見る秘められた戦後史

前作『The Bonin Islanders』(2021年)において、小笠原の先住民がもつアイデンティティを探り、複雑な歴史の糸を提示した長沢慎一郎。2008年から小笠原に通いつづけ、島の人々や場所との交流を深めるなかで、第二次世界大戦後の米軍占領期間(1945~1968)の影響や痕跡に目を向けるようになった。

「米軍占領下の父島には『メリーさんの羊』と名付けられた核弾頭が配備されていた」

本書の冒頭に記された言葉は、アメリカの童謡「Mary Had a Little Lamb」(メリーさんの羊)に由来する名をもつ核弾頭がこの島に存在したとされることを告げ、山中の壕の内部へとカメラは歩を進める。ある壕の奥、闇は深まり、そこには白い塗装で覆われたもうひとつの壕が現れた。腐食した重々しい鉄扉を開け、その密室の空洞に光を当てる。銅板で覆われた壁や天井。わずかに残る金具や椅子。一歩ごとに照らし出される異様な質感と同時に、内部の空洞が迫ってくる。ないはずの核が置かれた場所。今はそれが不在である空間を写した写真は、失われた時間と記憶の圧倒されるような量感を湛えている。

ページを進める合間に不意に現れる小笠原の光に満ちた海。巻末の、壕を抜けた向こうに見える椰子の木。長い時間を彷徨った果てに、「メリーさんの羊」が異なる相貌で立ち現れる。

― 出版社説明文より

キーワード: 戦争 メモリー

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判型
224 × 343 mm
頁数
113頁
製本
ソフトカバー、ケース
発行年
2024
言語
英語、日本語
ISBN
978-4-86541-193-5

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