奈良原一高「王国 Domains」

2019年6月中旬刊行、奈良原一高『王国 Domains』の予約販売を開始しました。先着限定でポストカードの特典あり。国内送料無料。

日本を代表する写真家・奈良原一高の1950年代における代表作「王国」。 これまでの作品集には未発表の作品を多数収録し、このたび新装刊行が決定!

戦後日本写真史を語る上でも名高い巨匠・奈良原一高の「王国」とは? 1958年9月に、銀座・富士フォトサロンにて発表された奈良原一高写真展「王国」。 1896年に創立された北海道・当別のトラピスト男子修道院を取材した「沈黙の園」と和歌山市の婦人刑務所を舞台とした「壁の中」という、それぞれ外部と隔絶された2つの空間を舞台とした2部構成でまとめられたものです。

その約1年半前の1956年5月に開催された初の個展「人間の土地」に続く2回目の個展であったこの「王国」展の意図を、奈良原は後に以下のように語っています。

異なった2つの「場」に生きる人間の姿を同時に見つめることは、 そこに浮かんで来る現代の状況と心層の響きに耳を傾けることでもあった。 ~中略~ 自らの必然によって求めた祈りの生活と法律によって強制隔離された生活、 その動機は異なっていても、共に閉ざされた壁の中の世界…、 そのような壁は日常の心の中にもとらえがたい疎外の感覚となって介在していて、 当時の僕はそのような自分の内部にある不安と空しさをこの『王国』の場をみつめることによって超えようとしていた。 事実は観念をとびこえる肉体をもっている。

この展覧会で発表された作品により、奈良原は第2回日本写真批評家協会新人賞を獲得します。 本の形としても、これまでに1971年に中央公論社から『王国 映像の現代 1』として、1978年に朝日ソノラマ社から『王国 -沈黙の園・壁の中 ソノラマ写真選書 9』として刊行されますが、いずれも絶版の状態が続いていました。

その奈良原の「王国」が再び注目されるきっかけとなったのは、2014~15年に東京国立近代美術館で行われた「王国」展でしょう。2つの極限世界で生きる人々をとらえた数々の写真を前に、訪れた多くの人が息をのみ、作品の放つ世界観に圧倒されました。 こちらの展覧会でも掲載された一連の写真だけではなく、これまで作品集には収録されることがなかった未発表作品をも多数含んだ新装版としてまとめるのが、このたびの『王国 Domains』です。

― 出版社説明文より

収録予定作品

  • 沈黙の園:87点
  • 壁の中:48点

巻末には、奈良原一高研究者としても活躍する島根県立美術館主席学芸員・蔦谷典子氏による解説も収録。

沈黙の園 ©奈良原一高 2019
沈黙の園 ©奈良原一高 2019
沈黙の園 ©奈良原一高 2019
沈黙の園 ©奈良原一高 2019
沈黙の園 ©奈良原一高 2019
沈黙の園 ©奈良原一高 2019
沈黙の園 ©奈良原一高 2019
沈黙の園 ©奈良原一高 2019
壁の中 ©奈良原一高 2019
壁の中 ©奈良原一高 2019
壁の中 ©奈良原一高 2019
壁の中 ©奈良原一高 2019
壁の中 ©奈良原一高 2019
壁の中 ©奈良原一高 2019
壁の中 ©奈良原一高 2019
壁の中 ©奈良原一高 2019

奈良原一高(IKKO NARAHARA)

1931年福岡生まれ。 1959年早稲田大学大学院(芸術学専攻)修士課程修了。 在学中の1956年に、初めての個展「人間の土地」が大きな反響を呼び、写真家としての活動を始める。 1959年、東松照明、細江英公、川田喜久治らとセルフ・エイジェンシィ「VIVO」を結成(1961解散)。その後、パリ(1962-1964)、ニューヨーク(1970-1974)と拠点を移しながら活動。1974年帰国後も世界各地を取材し、多数の展覧会を開催。写真集も数多く出版し、国際的にも高い評価を受ける。

主な個展に、「Ikko Narahara」ヨーロッパ写真美術館、パリ(2002-2003)、「時空の鏡:シンクロニシティー」東京都写真美術館(2004)、「手のなかの空 奈良原一高 1954-2004」島根県立美術館(2010)、「王国」東京国立近代美術館(2014-2015)など多数。 写真集に、『静止した時間』(1967)、『スペイン・偉大なる午後』(1969)、『ジャパネスク』(1970)、『消滅した時間』(1975)、『人間の土地』(1987)、『ヴェネツィアの夜』(1985)、『時空の鏡』(2004)、『太陽の肖像』(2016)など。主な受賞に、日本写真批評家協会新人賞(1958)、芸術選奨文部大臣賞、毎日芸術賞(1968)、日本写真協会年度賞(1986)、紫綬褒章(1996)、旭日小綬章受賞(2006)など。

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