The Second Seeing

The Second Seeing

劉怡嘉

出版社:赤々舎

世界という劇場。写真の森と顔の山。見る見られるの束縛された関わりの中「私」はこの舞台の何処にいるのか?

中国内モンゴル出身のRyu Ikaは、2019年に第21回写真「1_WALL」グランプリを受賞し、翌年に個展「The Second Seeing」を開催した。
写真プリントとモニターを用いた大胆なインスタレーションは、様々な撮影地や被写体自体を飛び越えたイメージの関連性と律動に満ち、空間全体を劇場に見立て、その世界に充満する視線の中、観者の位置を鋭く問うものだった。

本書は、その展示から発展し、見る人を本という劇場に招き入れる。
マンガ本のような手触りのページをめくるごとに、ユーモアと違和感が綯い交ぜとなった多様な登場人物を見る。反転する表裏やレイヤー、そこからの逸脱を見る。と思えば、不意に差し挟まれた顔の圧に曝され、その視線から逃れられない。登場人物は、時にページの展開の中で互いを見、プリントされ折り畳まれ、目を閉じたり、臓器のように再構成されたりする―。

人は常に見られている。見られていない世界は存在しない。現代社会に張り巡らされる検閲や、見る見られるの関係性、さらにRyu Ikaは、「自分の中で『他人の目』という存在を分裂させて、常にこの自分の中にある『他人の目』に監視されている」とする。「第二の性」に対しての「第二の観察」。人間の有りようを根底から問い、さらにその上に、未知の存在を窺わせる。

故郷内モンゴル、留学先の日本やフランス、旅で出向いたエジプトなど、スナップで蒐集した現実の欠片にノイズをかけたり、出力紙に手を加え、現実からデータ、データから現実を行き来する。その中に打ち込まれる自分の意識を通して、写真を作品化する衝迫に本書は貫かれている。流動し、エネルギーが連関するこの世界という劇場。作家も見る人も、舞台の反射の光に照らされている。

これらは「写真は真実だ」「写真は虚構だ」という引き裂かれたふたつの態度から構成されたアンビバレスな混合物なのだ。いっぽうでは肉体や粘膜、汗や血、動物の死体といった要素が世界の生々しさに触れる(=嘘の真実らしさ)。他方で造花や仮設のプール、人工芝による地形、映像の図像をとらえ、世界は偽物だと憂う(=虚構の世界という真実)。こうした強いコントラストによる摩擦が、世界の実感と、その操作の手触りを同時に伝える。
― 飯岡陸(キュレーター、森美術館勤務)テキスト
《抵抗としての私――Ryu Ika「The second seeing」について》より抜粋

判型
297 × 223 mm
頁数
292頁
製本
ソフトカバー
発行年
2021
言語
英語、日本語
ISBN
978-4-86541-128-7