袖幕

袖幕

木村和平

出版社:aptp

多々ある記憶の中でも、発表会の日に舞台裏を覗きにいった際に体感した、
舞台袖に射し込むおおきな光。
まるで初夏の満月のような光。

そのイメージが、いまでも身体のおくに、鮮明に残っている。

― 木村和平(あとがきより)

木村が実家で偶然見つけた一枚の古い写真。
それを眺めているうちに、幼い頃に出会った、姉とバレエに関するさまざまな記憶が蘇ってきたと言います。

姉が通うバレエ教室のおおきな鏡、真似て踊ったくるみ割り人形、トウシューズの履き方。
その体験は、木村がこの数年間、撮ることを介して寄り添い続けたバレエ教室の子供たち、
そしてこの『袖幕』へと繋がる、最初のきっかけとなりました。

そんな多々ある記憶の中でも、特に深く残っていたのが、客席から観た舞台ではなく、
小さなバレリーナたちが待つ舞台袖から見た、おおきく力強い「光」でした。

臙脂色の装丁は、舞台袖に下がる幕=袖幕を連想させます。
『袖幕』をめくることで、私たちは木村の記憶に残るその「光」を、なぞらえていくことができるでしょう。

陽の光が木々の間 から溢れるように。
その美しさに思わず目を細めるように。
少女たちのかけがえのない時間。
いま、いまが流れていく。
瞬間が、連続して。
それは光のはやさで。
決して振り返らない。
二度とは訪れない。

木村和平のシャッターは光をとらえる。
輝きの波を。
彼のまなざしは儚いものをまっすぐと見つめている。
いつも、そっと優しく包み込むように。

ひかり輝いている人と出会うといつも思う。
ああ、この子の今を彼に撮ってほしいな。
彼ならこの、一瞬の煌めきを捉えることが出来るだろう、と。

― 出版社説明文より