山元彩香は1983年に神戸市に生まれ、現在も同市を拠点に制作を続けています。大学では最初、絵画を専攻しますが、次第に自身の身体を使ったパフォーマンス作品や映像作品の制作に移行し、2004年のサンフランシスコへの留学を機に写真の制作を始めました。言語によるコミュニケーションが難しい状況のなかでの撮影は、写真というメディアが本質的に抱える性質以上に他者との様々な接点を作家にもたらし、以降、暴力的でありながらも極めて魅力的なイメージ生成の場と言えるポートレートの撮影を続けています。「自分の瞼に蓄積されたイメージでは想像しえない、既知の言葉や知識が通用しない場所」を撮影地に選び、2009年のフィンランド、エストニアでの撮影を皮切りに、エストニア(2010年)、ラトビア(2011、12年)、フランス(2012、13年)と撮影を行ってきました。
撮影に用いられる衣装は全て撮影地で準備されます。また、被写体となる人物も撮影場所も全て現地でのコミュニケーションを通じて決定され、撮影も全て自然光によって行われるため、都市部を避けた地方が撮影地に選ばれます。意思を伝え合う言語ではなく、音声のやり取りや身振りを通してコミュニケーションを図り、撮影場所を決め、それぞれに衣装をあてがうという過程を通じ、山元は被写体となる人物たちの固有名詞を奪うような感触があると言います。たしかに、被写体たちが日頃纏っている衣服をはがされて撮影された作品には、どこか無国籍で時代性をすり抜けるような雰囲気が漂っています。しかし、作家自身も自覚的であるように、いくつものステップを経て制作されたポートレートは、一体だれのものと言えるでしょうか。固有名詞を奪われながらもそこに存在する人物は、作家の所有物となることも、鑑賞者の所有物となることも拒否するようで、単線的な関係性を結ばないまま存在し続けているようでもあります。こうした齟齬を抱えることで、豊かな写真の可能性を喚起する山元彩香の作品をこの機会に是非ご高覧ください。

年表

2004 California College of the Arts 交換留学
2006 京都精華大学 芸術学部 造形学科 洋画コース卒業
2009 Estonian Artist Association ゲストスタジオにて滞在制作
2011 ISSPのワークショップ(by Claudine Doury)に参加
2012 LES RENCONTRES ARLES PHOTOGRAPHIE(by Claudine Doury)に参加
2013 Encounters of young international photography 2013/フランスのニオールにて滞在制作と展示を行う

出版物

2014 「Nous n'irons plus au bois」タカ・イシイギャラリー フォトグラフィー/フィルム
2012 「amnion」リブロアルテ

個展

2014 "Nous n'irons plus au bois" タカ・イシイギャラリー フォトグラフィー/フィルム, 東京
2012 "Nous n'irons plus au bois" CAP studio Y3, 神戸

グループ展

2013 "ジャパニーズフォトグラフィー戦後ー現在"タカ・イシイギャラリー フォトグラフィー/フィルム, 東京
2013 "Paris Photo LA 2013" ロサンゼルス
2013 "Encounters of young international photography"Moulin du Roc,Niort,France
2013 "東川町赤レンガポートフォリオオーディション受賞者展" ヨコハマフォトフェスティバル
2012 " no found photo fair" パリ, フランス
2012 "東京フォト" ミッドタウンホール, 東京
2011 "tri-angle" 木村工務店, 大阪
2011 "Gala Exhibition" Goethe Institute, リガ, ラトビア
2011 "ISSP FINAL Exhibition" ラトビア
2011 "東川国際写真フェスティバル インディペンデンス展" , 北海道
2010 "絵の彼方" ギャラリーフロール,京都
2007 "写真新世紀 大阪展 2006" アートコートギャラリー, 大阪
2006 "写真新世紀 東京展 2006 " 東京都写真美術館
2005 "目の前を聞く" ギャラリーフロール, 京都

受賞

2012 東川国際写真フェスティバルポートフォリオオーディション 準グランプリ
2006 写真新世紀 佳作 / 選:荒木経惟

山元彩香の書籍

山元彩香のプリント