張碓から忍路へ

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張碓から忍路へ

佐藤圭司

出版社:Place M

忍路湾沿いの国道5号線は2018年3月17日に閉鎖され、積もった雪だけがただ静かにその道を覆っていた。

冬の張碓(はりうす)は、それは厳しくて海鳴りが聞こえてくる。お腹の底に響いてくる海鳴り。その海鳴りが聞こえてくる海岸線に誘われるように、小樽を超えて忍路(おしょろ)という場所にたどり着いた。「忍路」はアイヌ語の「オショロ・コッ」、お尻のような窪みという意味だそうだ。かつて鰊漁で栄えたこの地域、しかし今はそれも廃れ冬の町は凍りつき、ただ海鳴りが聞こえてくるだけだ。その地に魅せられ冬の間、毎月飛行機に乗り通い続けた。そんなあるとき、忍路湾沿いを走る国道5号線が廃止になることを知った。国交省のサイトで調べると、落石事故が後を絶たないため新たにトンネルを掘り海沿いの道は廃線にする計画だった。忍路湾沿いの国道5号線を走る路線バスに乗りながら、この美しい海が見える車窓ももう見られなくなるが残念だった。2018年3月17日、忍路湾沿いの国道5号線は廃止となりトンネルの新ルートに変わってしまった。私は廃線の1週間後にこの目でその事実を確認した。現場ではまだ工事の人が行き来しており、道路を閉鎖する作業を続けていた。再び冬が来て、閉鎖された道に雪が降り積もり、誰も通ることが無くなったその道を遠くから眺めた。

― 佐藤圭司

$31.81

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判型
220 × 297 mm
頁数
95頁、掲載作品84点
製本
ハードカバー
発行年
2019
言語
英語、日本語
エディション
100
ISBN
978-4-905360-28-5

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