Shrove Tuesday

彼らはあらゆる手段を使って、ボールに向かってゆく。
ボールを中心にひとつの密集ができ、その中に埋もれたボールはなかなか姿をみせない。
たまにボールが動くと一気にその密集ごと動き出す。
判断が遅れると危険だ。
決まったユニホームもなく私服でボールを奪い合っているものだから、敵や味方や観戦者の境界も曖昧だ。
ボールの周辺は常に混沌としている。

これが350年続くとされるフットボールの原風景。
その混沌の中に、ただ本能のおもむくまま身を投げじていく彼らの姿は、なんと生々しく、人間の業を見るようだった。

私は必死に迫っていた。
時に突っ込み、時には逃げながら。

― 甲斐啓二郎「Shrove Tuesday」より

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