for tomorrow

for tomorrow

蓮井元彦

出版社:リブロアルテ

景色はその時の気持ちによって表情が変わります。そして僕はそんな気持ちのフィルターのかかった景色を追いかけます。
故意に写真を撮りに出かける時に撮れるだろう写真とはまた異なる写真がきっとそこでは存在するのだろうと思います。
僕は時折匂いのようなものに敏感になります。 匂いとは鼻で感じるそれではなく、気持ちで感じる匂いのことです。街の匂いや人の匂い、生活の匂いなどに惹かれて出かけます。 知らない街にただ嗅覚に頼って出かけてみたりするのです。
行く先にはもしかしたら何も無いかもしれないけれど、思い切って行ってしまえば想像していなかった何かに出会える。そして、僕の気持ちと目の前の景色が同調して、その時もしカメラが肩にかかっていれば、シャッターを切りたくなるのです。(と言ってもカメラ を持っていない事は稀有なのですが)

気持ちのフィルターというのものは存在しているのか、それは写真に写るのか、ただの思い込みなのか、そんな疑問へ対して自問自答すること自身が僕には一つの創作の動機とプロセスになっています。
写真を撮る理由はとても私的なものです。しかし一枚の写真の中に写っている世界はまぎ れもなくパブリックであって、決してそれ自身では私的になりえません。それでは何が私 的な写真と言えるのだろうか。僕は撮影者とその写真の関係性によってのみ、その写真は私的になり得るのだと思いま す。
そして僕は二つの対極な世界の狭間にぶらさがるように、時にはメトロノームの針のように行ったり来たりを繰り返すのです。

-作家ステートメントより